<ニュースレター「マネーの知恵」 2021年4月発行>
2021年4月6日に国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済成長見通し(WEO)を発表しました。
IMFの世界経済成長見通しは世界経済に与える影響が大きく、客観性の点でも優れています。
短期的なマーケット変動は実体経済の動きよりも、市場モメンタムの影響を受けやすいものですが、しかし、マーケットの短期的な予測は困難なものですし、長期的視点に立てば「価格は価値に収斂する」ものなので、経済のファンダメンタルズをしっかりと押さえておいたほうがいいでしょう。
これは「木を見て森を見ず」の状況に陥ってしまうことを防ぐことにも繋がります。
■1月時点の予想から上方修正
世界全体と主要地域・国の経済成長見通しは下記の通り。
世界全体としては1月の予想よりも0.5ポイント上方修正されています。これはワクチン接種の進展や、各国・地域の積極的な経済対策を材料とするものです。また、特徴的なのは先進国のほうが大幅に引き上げられている点です。これは米国バイデン政権が1.9兆ドルもの巨額の追加経済対策を成立させたことにより、米国のGDPが今年前半にもコロナ前の水準に戻るという見込みからです。
■好材料が出尽くした米国
その米国のマーケット環境はどうかというと、米国では大統領就任から100日間を「ハネムーン期間」と言って、ご祝儀相場になって株価が上昇する傾向がみられます。
今回のハネムーン期間に関しては、好調な経済環境を背景にFRBがテーパリングに動き出すのではないかという懸念材料がありましたが、雇用環境の改善が質の面で遅れているため、FRBは当面は現状の金融緩和を継続することが発表しました。
また、バイデン大統領の目玉政策であった総額1.9兆ドルもの追加経済対策が実現することも決まり、マーケットは好材料がほぼ出尽くした様相になっています。
足元の経済環境は新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進む一方で、行動制限緩和に伴う感染増加が報告されており、急速な景気回復が持続不可能であることが鮮明になりつつあります。
やはり新型コロナウイルスの収束には、相当程度の時間がかかることを見込んでおかなくてはいけないと思われるため、今後についても加速と減速を繰り返すような景気回復の形になってしまうと思われますが、政府・中銀の景気回復を最優先とした政策運営の後押しもあって、全体的には回復基調でしばらく推移していくのではないでしょうか。
■グロースからバリュー・景気敏感株へ
その中でもマーケットのトレンドが変わりつつあることは押さえておかなくてはいけません。
2020年はグロース株が32%上昇、その一方でバリュー株は-1.4%の下落となり、グロース優位の展開でした。
しかし、2021年1月から3月までの期間で見れば、グロース株が1.9%の上昇だったのに対しバリュー株は10.1%で、2020年とは逆にバリュー優位の流れに変化しています。
米国では7月にもワクチン接種率が8割を超える見通しになっていて、これまで出遅れていた景気敏感株の回復も見込める状況であることから、今年に関しては割安株や景気敏感株がマーケットを引っ張っていくような形になっていくのではないでしょうか。
このような潮目の変化は昨秋以降から起きていることですが、 まだ変化に気づいていない個人投資家も多いようですね。
バリュエーション面では資本財・サービス、情報技術(IT)、一般消費財・サービス、コミュニケーションサービス、素材セクターの割高感が目立っています。
今後企業業績が回復することで割高感が相殺される可能性はあるものの、PERが高過ぎる企業などは、今後の業績動向次第で急落する可能性があることも頭に入れておいたほうがよいでしょう。
今年の企業業績は当然ですが、来年以降の業績見通しについても要注目です。
家計部門における余剰貯蓄が膨らんでいることや、長期失業者の増加など弱含みのある雇用環境を背景に金融緩和の継続が見込まれることから、米国の株式市場は今すぐ大きく崩れる状況にはないと思われます。
しかし、 富裕層へのキャピタルゲイン課税のように企業や家計の財布を引き締めるような政策の実行可能性も高まってきていることから 、 「Sell in May」が現実となる可能性もあります。
その時に一時的な調整で済めばいいのですが、好材料の出尽くし感も強いため、今後の動向には警戒しておいたほうが良さそうです。
また、長期的視点に立ってみれば、テーパリングをきっかけに、これまでのような「米国株一強」と呼べるような時代が終わりを迎えるのではないかと考えています。
■欧州は欧州復興基金の財政政策に注目
米国や中国、日本などの景気回復が鮮明になる中、欧州経済は新型コロナウイルスの感染再拡大で不透明感が漂う状況になっています。
ECB (欧州中央銀行)は4月政策理事会において金融政策の現状維持を決定しましたが、ラガルド総裁は足元のユーロ圏経済について、2021年1-3月期はマイナス成長になった可能性が高いという見解を示しました。
同時に4-6月期には成長率はプラスに転じ、新型コロナワクチンの普及に伴い景気は回復していくと見込んでいますが、ワクチンの普及が遅れれば下振れすることも十分考えられる状況です。
マーケット環境はどうかというと、3月のストック・ヨーロッパ600指数は5.6パーセント上昇しました。
世界的に新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が強まっている中、 新型コロナワクチン普及や米国の大規模な追加経済対策、ECB の緩和姿勢継続などを受けて高値圏で推移しています。
特に目立つのが好調な製造業部門で、4月23日に公表されたユーロ圏の4月総合PMI( 購買担当者景気指数)は53.7で、事前予想の水準(52.8)を上回る結果になっています。
また、厳しい環境が続いていたサービス業部門も好不調の分かれ目とされる50を超えてきており、回復への期待感が高まっています。
域内でのワクチン接種の遅れは気になるものの、4-6月期には総額約2兆ユーロの財政刺激策の実施も見込まれており、当面はリスクオンの流れが継続すると思われます。
懸念材料は何かと言うと、やはり新型コロナウイルスの感染が再び拡大することです。
変異種の感染拡大もあってフランスやイタリアは行動制限を最強化、ドイツも3月末に行動制限緩和計画を撤回したように、一部で経済活動を止めるような動きが起きています。
アストラゼネカ社のワクチンに対する不安が広がっていることもあり、当初の計画よりもワクチン接種に遅れが出ている状況で、マーケット最大の不安要素であることは間違いありません。
また、欧州復興基金を使った財政支援策にも不安が残ります。
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会(EC)は、新型コロナウイルスの危機下にある加盟国の経済を立て直すために、欧州復興基金の資金調達計画を4月14日に発表しました。
2021年から26年の調達規模は 昨年示された当初計画を大幅に上回る約8060億ユーロ(約105兆円)もの規模になっています。
ECは6月までに資金調達の目途をつけると説明していますが、一部の国では財政が苦しい加盟国に返済義務のない形で補助金を配分することに対する根強い抵抗感があるようで、補助金の拡大に対して制約を課すべきだという意見も出ており、資金調達と配分のどちらにおいても課題が残されています。
しかし、仮に欧州復興基金の財政政策が計画通りに進むことになれば、早ければ夏頃に一部が配分される見通しになっているため、景気への大きなプラスのインパクトを与えると思われます。
【著者】
久保 逸郎(FPオフィス クライアントサイド代表)
ファイナンシャルプランナー
金融知力インストラクター
日経情報活用アドバイザー(日経メディアプロモーション公認)
<講師プロフィール>
高校を1年で中退。独学で大学入学資格検定を取得して大学進学。
大学卒業後は大手リース会社、外資系生命保険会社を経て、平成15年3月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立。
相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近いセミナー等の講演活動や、マネー雑誌等への原稿執筆などを行っている。
<主なメディア実績>
読売新聞・朝日新聞・朝日新聞AERA・東洋経済・財界九州・エコノミスト・マネープラス・FPジャーナル・ファイナンシャルアドバイザー・TVQ九州放送「九州けいざいNOW」・FBS福岡放送「めんたいワイド」・九州朝日放送「ニュースぴあ」ほか
『Financial Adviser』2021年SPRING号
2021年3月1日 『Financial Adviser』2021年SPRING号
特集「老後資金づくりをいまどう提案するか?」に寄稿
2021年3月8日 オンライン勉強会開催
『~宴はいつ終わる?~ 最新の投資環境(2021年3月)』
【西海市で魚ランチ】
コロナでプライベートでの外出を極力控えるようにしているため、今回は美味しかったランチを紹介します。
これは3月30日に長崎県西海市大島に行った時に食べた大島大橋手前にある海鮮問屋のお刺身定食です。
名古屋育ちの私にとっては、福岡のスーパーで普通に売られている魚でも十分に美味しいのですが、やはり長崎の離島の魚は鮮度が違って、コリコリした食感と甘みが味わえます。
味噌汁も大変美味しくて、それだけでも満足できるような味でした。
海鮮問屋(長崎県西海市)
0959-32-9889
<資産運用(投資)のプロとして寄稿>
Financial Adviser
2020年AUTUMN号
特集「withコロナ時代の資産運用アドバイス」にコロナ禍での資産運用方法を寄稿(約10ページ執筆)
FPジャーナル(日本FP協会)
2017年12月号
『活躍する先輩FPに聞く 起業・集客・経営のノウハウ』特集/資産運用アドバイスを求めて、九州一円から相談者が集まるFPとして紹介されました。
Financial Adviser
2019年SUMMER号
不安にさせない運用アドバイス特集
(10ページ執筆)
運用アドバイスに長けた3人のエキスパートとして紹介されました。