リオオリンピックで日本選手のメダルラッシュが続いていますね！


地球の反対側のブラジルでの開催のため時差が大きく、私はほとんどテレビで観ることができていませんが、ニュース配信を通じてその活躍が伝わってきます。


メダルは逃したものの将来性のある若手選手も多く、次回の東京オリンピックに向けていい弾みになるのではないでしょうか。


■オリンピックの景気浮揚効果に疑問
そこで今回はオリンピックで景気が良くなるのかということについて触れたいと思います。


銀行や証券会社などのセールス現場では、「オリンピックやサッカーのワールドカップが開催されるので、これから景気が良くなります。株価の上昇が期待できます。」というような言葉がセールストークとしてよく使われます。


資産運用セミナーなどでもこのようなことはよく聞きますが、それははたして本当でしょうか？


今オリンピックが行われているブラジルの今年の経済成長率は、ＩＭＦ（国際通貨基金）の予想値では-3.3％（予想値）となっていて、マイナス成長の大変厳しい状況です。


ブラジル国内の景気が大変厳しいので、多額の予算を使ってオリンピックを行うことに対して反対をしている国民も多いようです。


ブラジルワールドカップが開催された2014年も1.3％（実績値）で、それまでの成長率に比べて落ち込みが目立ちました。

その前のロンドン（英国）や北京（中国）での開催もけっして目立った景気浮揚効果はなく、株価の上昇には結びつきませんでした。

■オリンピック開催で景気が良くならない3つの要因
このようにオリンピック開催による景気浮揚効果が出ていないことには、いくつかの要因があると考えられます。
私が感じているのは下記の3つが大きなところです。


①経済のグローバル化が進展
グローバル化の進展とともに年々各国の経済が結びつきを強めているため、一国のイベント効果よりも、世界経済の動きに左右されることが大きくなっています。


②インフラ整備による景気押し上げの効果が弱まる
かつての東京オリンピック（1964年）は高度成長期の途中であり、社会インフラもまだまだ未整備な状態でした。


ちょうどその東京オリンピックまであと9日という同年10月1日に、新幹線（東京～大阪間）が開業しました。
羽田空港～浜松町間のモノレールが完成したのもその前月です。


オリンピックに向けて整備したこのようなインフラが、その後の日本の経済発展に大きく貢献したことは言うまでもありません。


しかし、今はとくに先進国においては社会インフラがある程度整っているため、オリンピック開催のためのスタジアム建設による建設業界の需要増加など、その効果は限定的なものになるのではないでしょうか？


③先進国の影響を受けやすい新興国経済
ブラジルのような新興国の経済はまだまだ内需が弱いため、安価な労働力を活かした先進国への製品輸出や、資源の輸出に依存する部分が大きいです。


先進国経済の影響が大きく、また、世界経済の中心である米国の金融政策に左右されやすいという特徴があります。

■2020年の東京オリンピック開催に向けて
このように最近行われた過去大会の実績や、足元の世界経済の状況を踏まえると、2020年の東京オリンピック開催で景気が良くなるという考え方には疑問を持っています。


もちろん大会期間中は多くの外国人が日本を訪れますから、首都圏を中心にインバウンド消費などで短期的に盛り上がってくれるとは思います。

しかし、莫大な予算を使うため、その後には債務問題などがクローズアップされる可能性は十分に考えられます。


今のリオオリンピックの盛り上がりに水を差す気はありませんが、イベント開催のインパクトや過去の高度成長期の経験にはあまりとらわれることなく、投資を行うに当たっては慎重な判断が必要であることを頭に入れておいてもらいたいものです。